蛇にピアス [小説]
ようやく世界につながった気がします。
ここ数日は学会関係のことで忙しくて更新できませんでした。
今日は金原ひとみ著『蛇にピアス』です。
金石範がこの作品についてこのように述べています。
いい作品ですよ。私が感心したのは、若い女の子が日本社会のニヒリズムを見事なまでに感じ取っていたことでね。蛇の舌みたいなスプリットタン、体中の入れ墨、大きなピアス……。無邪気に真摯に傷つけあいながら、大きな水槽のなかの金魚みたいに喜んで泳いでいる。ぞーっとした。無臭のニヒリズムですよ。目的もなく、ぬるま湯につかって。歴史がわからない、わかろうとしないのも、この浮遊感のせいじゃないかと思えてきた。 (「不信を乗り越えて-日朝首脳会談から3年」『毎日新聞』夕刊 2005年9月29日)
芥川賞受賞で話題になっていた頃、私も読みました。周りの反応は、まちまち。アマを思う気持ちが切なくていいとか、グロくて現実味がないとか、とにかく賛否両論だったことが驚きでした。その後他メディアに移行して読んだという人も多かったけれど、私は是非原作である小説を読んでほしいと思います。金石範の評価を知って再読しましたが「無臭のニヒリズム」と言われるとまさにそのような感じだと思います。私が最初に読んだときに感じた空虚感は、この無臭さにあったのかもしれません。
「何か」を傷つけることでしか自分の存在を証明出来ない、世界の中に溶けてしまいそうな透明感が誘発した犯罪も多い現代社会で、それでも必死に生きていこうとする人間が、この作品には描かれていると思うのです。
コメント 0