CGH! [漫画]
サプリと同じくフィールヤングで連載中の小池田マヤ著『CGH!(Cactus,GotoHeaven!)』の二巻がようやく届いたのでご紹介。
フィレンツェに失恋旅行をした主人公ヒナが旅先で出会った一夜の相手マキオと日本で再会!しかしそのマキオは女で、しかも就職先の社長?!というストーリーです。変態さんばかりの会社と銘打っているのですが、どれも現代にはありえるもの(フェチ、バイ、S嗜好)ですし、なによりもキャラクターが魅力的で面白いのです。たとえばマキオは20歳まで生きられないとして人生を歩んできた大富豪の娘なのですが、だからこそ"現在"をとても大切にします。
そんな彼女の義兄弟でもあり夫でもあり幼馴染でもあるクロスは彼女とともに20歳で死ぬつもりでいたのに…という、独白のシーンが色々と考えさせられるのです。
20歳までしか生きられないと言われ続けたおまえと 共に20歳で逝こうと思い生きてきた俺と 思いはすでに一つではなくなって ズレてきている 好きなように…ってどう生きる? 千歳…俺は20歳を超えたおまえと俺なんて想像した事なかったぜ(本文引用)
生きることは気持ちいい?という問いに、彼は考えます。好きなように生きることとはどういうことなのか、彼はまだつかみきれていないのです。しかし、考えてみれば私たちも好きなように気持ちよく生きることを知っているでしょうか?この漫画は一見ギャグっぽくエロっぽく描かれているのですが、底辺にながれるエゴイスティックなリアリズムを見逃しては面白さが半減してしまうように思えてなりません。
あと、作中に出てくる多肉植物やサボテンの知識がまた面白かったり。思わずサボテンを育てたくなってしまいます♪
本日のBGM→
pray (通常盤)
笑う大天使 [漫画]
もうすぐ映画になりますね。川原泉著『笑う大天使(ミカエル)』です。
川原泉自身が哲学者と呼ばれるように、その作品には表面的な面白さだけでなく、世の中を冷静に見つめる視点や、底辺を流れるせつなさ・やりきれなさが、非常にうまく描かれていると思うのです。言わば、いつもはおちゃらけている女性がかげでは声も上げずに涙を流している、というイメージでしょうか。
川原作品はほぼすべての作品に共通項がありまして(手塚作品における御茶ノ水博士のように…)この場合は舞台となる「聖ミカエル学園」がそれにあたります。このお嬢様学校(ではガンモドキとか食べている場合でなく薔薇のジャムとかを口にするようなイメージなのだそう)にネコをかぶって入学した三人が、二年生になって素の自分をさらけだすきっかけが出来る(三人のウチの一人が転入してくるのです)ところからストーリーが始まります。
彼女達にはあだ名がつけられていて、それがまたおかしいんですよ。運動神経バツグンで、ホテル王の娘カズネさんのあだ名は「聖ミカエルのオスカル(@ベルサイユの薔薇)様」彼女は一年生のアイドルとして後輩に慕われます。外食産業で巨万の富を築いたパンプキンチェーンの娘、地味で真面目がとりえのユズコさんは「コロボックルちゃん」知恵の小人として上級生の三年生に可愛がられています。転校生で東大を目指すほどの才媛、実の兄が売れっ子小説家というフミオさんは、そんなアイドル二人を上級生下級生に取られてしまった同級生の救世主「(ラオウよりつよい)ケンシロウ様」として「アンシャンレジームの終焉ですわ皆様!」「世紀末救世主伝説ですわ!」と持ち上げられてしまいます。
(ちなみにカズネさんは『メイプル戦記』一巻にちょこっと、カズオミさんのお見合い相手のサクライアツコ嬢は『フロイト1/2』に、それぞれ登場します)
そんな彼女達を慕っていた五人のお嬢様が誘拐された!という事件をきっかけに、三人の絆や周りとの絆、本当の自分とは何かを、思春期の女の子達が葛藤する、という作品です。
映画の前に是非、漫画を読んでいただきたいと思う作品のひとつです。
さてこれを映画でどこまで表現してくれるのか…。一人の哲学者川原泉ファンとして楽しみにしています。制服はうまく再現というか、デザインされていると思います。後はあの台詞回しや擬音語をどのように表現するかですね。
サプリ [漫画]
おかざき真里著『サプリ』。これは伊東美咲と亀梨和也主演で月9ドラマになるそうで。
ドラマの出来を見てから書こうと思っていたのですが、先に読了してしまったので、期待を込めてレビューをば。
男性にとって「安心できる・癒してくれる」女性って、古今東西必要不可欠な存在ではありませんでしたか?この男女平等(をうたっている)社会、特に働く女性にも、そういったサプリ的男性が必要になってくるのは当たり前のことだと思うのです。近年、働く女性と年下の男性の恋愛ものって増加傾向にあると思うのですが、漫画『サプリ』はそれだけでなく、「すべてを完璧にしすぎるから」結婚できない女性や、「結婚に求めるものと癒しとはまた別」という女性が登場します。
個人的にコーエツさんと柚木さんのカップルが切なくて好きです。
それはさておき、この漫画は、リアルに現実社会と闘う女性が描かれていて、男女の性差や区別についてとても考えさせられる作品だと思います。「フィールヤング」連載中。私はフィールヤング連載の漫画だと、「CGH!」も好きです。
さくらん [漫画]
『サプリ』を…と思っていたのですが、今日面白い発見をしたので先にこちらを。映画を見てからにしようと思っていたのですが…。
安野モヨコ著『さくらん』です。
後に日本一の花魁となる「日暮」の一生を描いた漫画です。廓に売られた子供がどのようにして女郎となっていくのかを細かく描写されています。「花魁になど、なりとうない」「なりとうてもなれんやつのほうが多いんじゃ。なりとうないは、なってから言え!」という台詞が印象に残っています。さらに「花魁はな、客に思ったことを言わせることができるんじゃ。それを手練手管というんじゃ」という台詞に、意地と張りが無ければ勤まらない過酷な女の世界が表現されているように思います。現在は休止中ですが「イブニング」にて続編を連載中です。
さて今日見つけた面白い発見というのが、以下のようなものなのですが…。
…このやうな民衆の好尚が如何に強かったかは、例へば談林俳諧の一巻でも通読したならば、思ひ半ばに過ぎるものがあるであらう。漁夫にとられた天の羽衣も質の流れと見、勅撰集での歌の選定も守随極めの秤にかけなければ止まないのである。又誰もが知る如く、近松の浄瑠璃では業平も当代の遊次郎の姿に、小町も島原・新町の遊女の粧ひに同じく描かれて居る。…(『頴原退蔵著作集』第十六巻-江戸時代の研究-)より引用
この主人公日暮(作中では「とめき」「おりん」「きよ葉」)の姉女郎の名前が上記に現れる「粧ひ」なんですね。映画では菅野美穂が演じるようです。美人で気が強く床上手という売れっ子花魁なのですが、こういうところで接点を見つけるとなんだかうれしくなってしまうのでした。
愛がなくても喰ってゆけます。 [漫画]
漫画の読了日記でもあるのに、漫画の紹介がまだでした。
というより、正直漫画のほうがたくさん読んでいるので、読了日記が追いつかないのもあるのですが…。今日はよしながふみ著『愛がなくても喰ってゆけます。』です。よしながふみといえば、『西洋骨董洋菓子店~アンティーク~』がドラマ化し、人気に火がついた印象がありますが、今も昔も変わらずリアリズムの追求を漫画という手法で行っている姿に非常に感銘を受けている次第です。
本書では、作者自身?がYながとして登場し、東京近辺の行きつけのおいしい飲食店を紹介するエッセイコミックです。ただ、普通のエッセイコミックと違う点は、他のよしなが作品に共通するようにこの作品にもエゴイスティックな人間像が赤裸々に描かれている点にあります。そして作者自身が食を愛してやまないことが、紙面を飛び越えて読者にまで伝わってきます。グルメエッセイコミックの"核"である、視覚以外の五感を呼び覚ます力を、この漫画は持っています。
東京圏に行く機会のある方は、是非一読してからの渡航をお勧めします。
やっぱりそして『西洋骨董洋菓子店』も好きなのですよ。作中にゲイが登場しますのでそういった性的嗜好に抵抗がある方にはお勧めできません。ドラマの方は"リングのジャニーズ"こと、本物のジャニーズタッキーと、椎名氏のギャルソン姿が非常に眼福です。