笑う大天使 [漫画]
もうすぐ映画になりますね。川原泉著『笑う大天使(ミカエル)』です。
川原泉自身が哲学者と呼ばれるように、その作品には表面的な面白さだけでなく、世の中を冷静に見つめる視点や、底辺を流れるせつなさ・やりきれなさが、非常にうまく描かれていると思うのです。言わば、いつもはおちゃらけている女性がかげでは声も上げずに涙を流している、というイメージでしょうか。
川原作品はほぼすべての作品に共通項がありまして(手塚作品における御茶ノ水博士のように…)この場合は舞台となる「聖ミカエル学園」がそれにあたります。このお嬢様学校(ではガンモドキとか食べている場合でなく薔薇のジャムとかを口にするようなイメージなのだそう)にネコをかぶって入学した三人が、二年生になって素の自分をさらけだすきっかけが出来る(三人のウチの一人が転入してくるのです)ところからストーリーが始まります。
彼女達にはあだ名がつけられていて、それがまたおかしいんですよ。運動神経バツグンで、ホテル王の娘カズネさんのあだ名は「聖ミカエルのオスカル(@ベルサイユの薔薇)様」彼女は一年生のアイドルとして後輩に慕われます。外食産業で巨万の富を築いたパンプキンチェーンの娘、地味で真面目がとりえのユズコさんは「コロボックルちゃん」知恵の小人として上級生の三年生に可愛がられています。転校生で東大を目指すほどの才媛、実の兄が売れっ子小説家というフミオさんは、そんなアイドル二人を上級生下級生に取られてしまった同級生の救世主「(ラオウよりつよい)ケンシロウ様」として「アンシャンレジームの終焉ですわ皆様!」「世紀末救世主伝説ですわ!」と持ち上げられてしまいます。
(ちなみにカズネさんは『メイプル戦記』一巻にちょこっと、カズオミさんのお見合い相手のサクライアツコ嬢は『フロイト1/2』に、それぞれ登場します)
そんな彼女達を慕っていた五人のお嬢様が誘拐された!という事件をきっかけに、三人の絆や周りとの絆、本当の自分とは何かを、思春期の女の子達が葛藤する、という作品です。
映画の前に是非、漫画を読んでいただきたいと思う作品のひとつです。
さてこれを映画でどこまで表現してくれるのか…。一人の哲学者川原泉ファンとして楽しみにしています。制服はうまく再現というか、デザインされていると思います。後はあの台詞回しや擬音語をどのように表現するかですね。
コメント 0