漱石と倫敦ミイラ殺人事件 [小説]
たった今読み終わった作品です。分量が少なめなので一気読み。
島田荘司著『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』です。
倫敦留学中の夏目漱石が、実在の人物と仮定したシャーロック・ホームズとともに事件を解決するというストーリー。数多くあるパスティーシュ小説作品のなかでも、かなりの出来栄えかと思います。まずは文体が漱石サイドとワトソンサイドに分かれていて、両方の視点から事件を追う気分を味わえるということ。そして小説自体が漱石とホームズの出会いというアイデアだけで進行させるのではなく、推理小説として確立されていること。この二点が挙げられるように思います。(そしてホームズファンにリップサービスがあるところなどもね)
最初の「つね61」のダイイング・メッセージの伏線が、ラストシーンで劇的な効果をもたらしていて思わずほろりときてしまいました。強引にこじつけたような"猫"も素直に面白かったです。謎に関してはイマイチですが、それを補って余りあるだけのエンターテイメントがこの作品にはあると思うのです。
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